2020年01月18日

「ある構造物屋の物語」に想う。

「日本自費出版文化賞」は、今年で23回目を迎えるが、2011年の第14回の大賞は弊社で出版した「アイヌモシリ・北海道」(杉山史郎著)が651店の応募作品の頂点に立ったことがある。この年は3月11日に東日本大震災が勃発した年である。
 昨日1月17日は、阪神大震災が起きて25年を迎えた。追悼する方々の心の傷跡は25年経った今も深く残り、決して癒えることはない。被災された方々や、遺族の方々の関東大震災以来の大災害を風化させてはいけないという強い意志が、参列した一人ひとりの祈るような黙祷から感じ取られた。
 この光景を報道で何度か観ているうちに、2年ほど前、第21回「日本自費出版文化賞」を決める部門審査の選考で、「ある構造物屋の物語」(今西 宏著)と云う素晴らしい本に出合ったことを思い出した。タイトルも内容もどちらかというと地味な作品で、6部門の中の小説部門の最終審査に入選されていた。
 阪神大震災後、鉄筋コンクリート造りの建物に対する耐震審査が厳しくなり、全国で構造物の再検査が行われ来た。2005年に耐震偽装問題が浮かび上がり、2006年には、建築法が改正され、構造設計一級建築士等々の資格が設けられ、建築再審査が厳格となったという。
 本書の解説によると、「主人公有川佑介は69歳、建築物の安全性を担保する構造設計一級建築士である。がんと闘いつつ建築事務所の承継を決意し、過去に担当した医院の構造図面の不備への対処に忸怩たる思いでいる。そして若い頃、想いを寄せた院長夫人との再会する。「死」を身近にした「構造屋」の透徹した目を通して描く仕事と人生。」云々。
 私は講評で次のようなことを書いたような気がする。「作者である主人公の誠実な生き方に感動しました。主人公の極めて高い倫理観、構造設計一級建築士としての職業意識には、驚きました。文章は平易で質が高く、久しぶりに素晴らしい本に出会ったと思います。」また今思えば、事業承継をするにあたって、財産のすべてを後継者に託してゆくという彼等への想いは、解説による事業主としてなかなかできるものではない。
 著者の今西さんは、本の中では大病を患っていましたが、現在ご存命であれば、74歳くらいの年代だと思います。いかがされているでしょか・・・・。


 
posted by あうる at 10:21| Comment(0) | 書籍
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